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魔力に関する追補説明

とりあえず魔法について若干のまとめをしておこうと思います。
私、緋紅、今回は完全記憶バージョンでおとどけです。
わあい~
あなたの説明が下手くそだから私がこんなところまで引っ張り出されてるんですよ? 一応その辺はわきまえてください
はあい。今日は僕は緋紅のアシスタントです!

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Q:魔力の使い方は?
 これまたざっくりしたのがきましたね……
 ええー?これ僕言ったつもりだったんだけどなあ
 いろいろと雑なんですよ……
 基本的な使い方としては、自分の中にある魔力を核にして、周りにある魔力を引き寄せて、対象にぶつけることで効果を発揮させます。これは簓がよく説明で用いるところですね。
 だいたいこれで全部じゃない?
 必ずしも対象にぶつけているわけではない魔法もあります、……そうですね、あなたがよくやる物の移動や通路の目くらましについてなどはその類でしょうか。
 物の移動はでも一応ぶつけていることにはなるんじゃないかな? 方法としては、適当に見えてる魔力線をとりたいもののところまで動かしてくっつけて、あとはその魔力線──っていうか紐に沿って引っ張って引き寄せるだけだけど。とりもちみたいな。
 まあ対象にぶつけてはいますが、対象へ魔力線の持つ力をあてているわけではありませんね。単純にものを動かすのに魔力線を使う、というのはだいたいどんな魔力線を使ってもできます。記憶を失った私は熱や光を帯びやすい性質の魔力線しか見えていませんが、これだけでも物の移動はできますね。性質が熱やらなので迂闊にすると取ろうとしたものを燃やす・焦がすやらの事故も起こしがちですが。このあいだはらなさんに朝ドアの前にしこんでいたものをお返しする仕掛けを張ってみたところです。ふふふ。
 仕込んでいたもの?
 なんでもありませんよ。そして通路の目くらましについてですが。
 これは何パターンか作り方があると思うんだけど。
 光に関する魔力をうまく組めば、壁に見せることができるから、それを張ったりとか。それだけだと緋紅とかには気づかれそうだから、光学系の魔力はできるだけ薄めに編んで、後ろに壁とか土によく含まれてる魔力を人為的に一か所に固めて、壁がそこにある、と思わせたりとか。
 入り込ませたくない部分の手前に、目の前には壁しかないと錯覚させる魔力を設置して、通過した人間の認識を変えちゃうとか。
 
 頭の中に魔力の影響を及ぼして誤認させるパターンは、らなとかがいるから屋敷の表の部分では使えないんだよね。倒れられたら大変だもん。
 そうですね。単純に魔力耐性がない人間に対してもですが、人間の体内に影響を及ぼさせるような魔力の場合、外部から与えられた魔力が自分の中の魔力と干渉して、予想以上の効果を発揮することもあります。
 極力魔力線の密度を薄く組めば問題ありませんが、対象となる人間の魔力特性をきちんと把握していない場合にむやみに体内に影響を及ぼさせるような魔法は付与しないほうがいいでしょうね。
 ひーろはそれで記憶を失ったわけだしね?
 ……そうですね。塔を出るときに私が受けた魔法が本来どういう効果を持つ魔法だったのかは未ださだかではありませんが、高濃度の魔力が脳内の自分の魔力と干渉して、いくつかちぎれてしまいました。これが私の記憶喪失の原因の概要と推測しています。
 なのでシンシアさんは新しくそこにつながる経路を作ればいいと言っているんですね。ヒルデが一時的に私の記憶をつないだときは、ちぎれた魔力経路の断片を、溜め込んだ魔力で一時的に無理やり繋いでいたようです。
 あのロケットの紫色の宝石部分が、私の脳内の魔力経路を作っている魔力と似た性質の魔力を溜め込むことができるようになっていて、ヒルデは私にそれを持たせることで宝石に魔力を充てんさせていたわけです。
 まー一口に魔力の使い方、といっても確かにいろいろあるね。投げてぶつけるだけが能じゃないね緋紅!
 それは普段の私を侮辱していると取っていいんですよね?

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Q:体の中にある魔力ってなんぞ?
 私たちの体の中には、体を動かすためにも魔力が張り巡らされています。らなさんのような魔力耐性の低いひとたちも、実は体の中には微量の魔力は存在するんですね。
 怪しげな本によれば『気』とか表現されていることもあるね。身体の魔力の流れを整えれば調子も良くなるんだよ。
 基本的にそういう性質があるので、体内の魔力含有量が多い魔法使いたちは、もともと魔力耐性の低い人たちより身体機能が高いという特徴があります。まったく、ここまで恵まれていたのに何故太古の戦争では先祖たちは負けてしまったのか。
 驕りでしょ。虚弱な人間たちは少ない力でも動かせるような強い機械や道具を作った。それがすごい発展しちゃって今の世界があるね。
 そういう経緯もあって、屋敷にいるとあまり感じませんが、この世界では科学技術は高度に成長しています。都市部の魔力は薄くなるよう調整され、我々は排斥されつづけるわけです。
 まあここにいれば関係ないけどね。で、体の中にある魔力は、魔法使いみたいに自分の中の魔力の流れを把握できるような人間であれば、ちょこっと体の中から出しちゃうこともできます。
 あまりたくさん出しすぎると、もともと基本的には体を動かすために体内を流れている魔力ですので、調子が悪くなってしまったり、ともすると動けなくなったりすることがありますが、最悪でも死んでしまうことはありませんね。
 らなさんや稀紗さんみたいな人でもまあ生きてはいられるわけですし。体に障害が残ることはあるかもしれませんけど。
 で、体の中にある魔力を出して何をするかっていうと、それを呼び水にして周りの魔力を集めるんだよね。
 体内の魔力にも多少個人差はあるみたいで、だいたいどんな魔力でも引き寄せられる僕やシンシアみたいなのもいれば、熱とか光を帯びやすい魔力は寄せるけど、木とか水とかによく含まれてるような魔力はほとんど引っ張ってこれない緋紅みたいなのもいるし。だから緋紅は植物育てるの下手なんだよね。
 私が単純に無精であるという理由も大きいでしょうがそれは大きなお世話です。
 ……なので使う魔法もだいたい得意分野があったりしますよね。私みたいな炎を操るのが得意な人間もいれば、しろくろのような、他人の体内のものとあまり干渉しあわない魔力を集めるのが得意で、体内に入れることで体の能力を向上させたり、痛みを感じなくさせたり、眠らせたり……という内向きの効果を発揮させたりするのが得意なものもいます。
 兄さんや簓は割とオールラウンダーですね。不得手はないけど得手もそんなにない。
 ゆー兄に関しては不得手はなくて全部得意! みたいな感じだけどね。
 シンシアさんも補助具は使ったりしているようですが、ほとんど不得手はないようですよね。
 言っておきますが、不得手の多い私が変わっているのではなく、私の周りの人間がおかしいんですからね。

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Q:魔力線にも性質がある?
 性質でいうと……どこかの大陸であるような四大元素説やら五行思想のようなものでしょうか。――系統立てられてはいないものの、存在はします。たゆたう魔力線の種類は明確に区切られておらず、何種類、などというのは定義されていません。個人の知覚に拠るものが大きいですからね。
 私が熱だと思って使っている魔力も、簓からすれば光であったり、などという事例は往々にして存在します。
 ただ、魔力線に含まれる性質を再定義して、効力を発揮させるのはあくまで奏者自身です。
 緋紅が熱を帯びる魔力線を集めるけど、それをぶっ放すときに、『燃えろー!』って思って投げればその先で燃えるし、『サウナにする!』って思って投げればその周りの温度が上がるんだよね。
 まあ燃やすには気温を上げるのよりもたくさん魔力線集めないといけないし、燃えるほどに集めた魔力で気温を上げようとするとものすごい温度になるだろうから、結局自然発火しちゃうものがあってもおかしくないかもだけどね。
 魔力線の効果を定義せずに集めた魔力を離した場合、そのまま発散していきます。魔力を集めている最中に妨害が入って魔力の制御を手放してしまったときは、また最初からやり直しになってしまうわけです。
 それだけじゃないよ。手放した瞬間、自分の御していない魔力をまともに浴びることになるから、魔力耐性がそこそこあるひとでもかなり魔力酔いになる可能性が高いと思う。
 簓は昔そういうの多かったですね。それで余計に魔力を扱うのが怖くなって最後まで紡げないっていう……
 とっても昔の話だから忘れて……
 あと性質を再定義するのは奏者自身という話でしたが、燃やすしか能がないという私が光を灯したりできるのもそこからですね。
 今でこそ単純に集めるだけで光ってくれる魔力線を見つけることができていますが、昔は燃やしてできる光から過剰な熱量を取り除いてランプにする、なんて面倒なことをしてました。
 熱を司る魔力線ならかなりの範囲まで見えるので、それを応用して相手の熱を奪う──所謂冷却魔法みたいなものも、理論上はできます。ここ数年練習していないのでできるか不明ですが。
 緋紅ももうちょい視えるようになって、風、というか気流を操れるようになるともっと応用効くようになると思うんだよねえ。一応だいたいどこにでもあるものだし視えると便利なんだけどな。
 魔力を綺麗に束にしてまっすぐ流せば熱風くらい起こせます。それでいいのでは?
 いや、ちょっとちがくて……まあやっぱり視えないんだね……
 さっぱり視えませんねえ。
 すべての魔力が見える人間、というものが存在しないので、この世の中にどれだけの種類の魔力があるのかはわかりません。あと視えたとして判別する分解能も必要ですしね。
 私が一口に熱、といって集めているものも、本当はちょっとずつ種類が違ったりします。
 この世に何色色があるのか、どれだけの種類音があるのか、っていう問いと似てるかもね。だいたい何色くらいにまとめることはできるけど、ホントは赤色だっていろんな種類があるでしょ。

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 まあ今日はこんなところですかね。また追補で説明が必要になれば私が引っ張り出されるんでしょうが……その機会がないことを祈りたいところです。
 緋紅ってなんか昔より喋るよね。
 説明しろということでしたからね。
 僕にはそんなに丁寧に教えてくれたことなかったのに……