「私には、私にだけが為せる、為さなければならないことがありました」
緋紅は失敗しました。
一切の記憶を失った緋紅は、自分の足場の見つからないまま、ぼんやりと日常を浪費しておりました。
もどかしく思いつつも、流されるままにすごしていましたが、ある春の日、うららかな日和の化身のような、柔和な雰囲気の貴人、千星から、以前の緋紅を知る人物が緋紅の存在を求めていると、屋敷への帰還を促されます。
今まで千星の助力で生活して来た手前、緋紅に断るいわれはありませんが、記憶のない彼女に何ができるというのか。
屋敷の大きさに対する居住人数は4人。
屋敷にいたころの緋紅を知りつつも隠すものと、屋敷にいたころの緋紅を知らないもの。
屋敷のところどころで触れる記憶の引っ掛かりを感じながらも、確かなものを見つけられない緋紅。
彼女は為すべきことを探し出し、為すことが出来るのでしょうか。